公開・更新日:2026年07月22日

日本不動産で利回り8%は可能か?事業投資と比較する前に知ること

日本の不動産で年間8%の利回りを希望する相談は少なくありません。しかし、主要都市の安定した賃貸不動産では、8%は一般的な水準ではありません。高い表示利回りには理由があり、事業投資には別の収益機会と別のリスクがあります。数字だけで選ばず、何が収益を生み、誰が運営し、どの損失を負うのかを比較することが重要です。

執筆

KEI TAKAHASHI株式会社SERENSEED 代表取締役。日本の上場半導体専門商社で台湾製Wi-Fiチップの日本大手メーカーへの導入を推進し、台湾ではTIL spaceを創業。
SERENSEED事業イメージ
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利回り比較の前提

  • 主要都市の安定型不動産では、利回り8%は一般的な水準ではない
  • 高い表面利回りほど、立地・築年・空室・修繕・運営条件を確認する
  • 事業投資は成長余地がある一方、元本毀損や換金困難を含む別のリスクがある

安定不動産の8%と事業投資を同じ物差しで比べない

日本不動産研究所の第54回不動産投資家調査(2026年4月)では、賃貸住宅一棟の期待利回りは東京・城南でワンルーム3.6%、ファミリー3.7%です。

掲載された主要地方都市も概ね4%台から5%台で、主要都市の安定型不動産において8%は通常の期待利回りとは言いにくい水準です。

未上場企業や新規事業への投資では、売上の成長、利益改善、事業承継、運営参加などを通じてリターンを目指します。大きな収益を得られる可能性がある一方、元本毀損、運営失敗、換金の難しさといったリスクも大きく、不動産の利回りとは単純に比べられません。

表面利回り8%と、手元に残る8%は違う

不動産広告の表面利回りは、一般に年間賃料を物件価格で割った数字です。購入時の税・仲介費用、管理費、修繕、保険、固定資産税、空室、原状回復、借入金利、為替差損などを差し引く前の数字であることが多く、投資家の手元に残る実質利回りとは異なります。

比較するときは、年間満室賃料ではなく現行賃料と稼働率を確認し、取得費を含む投資総額、毎年の運営費、大規模修繕、売却費用まで入れた複数年のキャッシュフローを作ります。台湾からの投資では円・台湾ドルの為替と送金、保有主体、日台双方の税務確認も必要です。

8%に近い不動産には、利回りを高く見せる条件がある

8%の物件が存在しないわけではありません。ただし、郊外や人口減少地域、築古、空室、短い賃貸借、修繕負担、再建築・用途・権利関係、運営の難しい宿泊・店舗など、価格が低い理由または収入が不安定になる条件を伴うことがあります。

高利回りは『お得』の印ではなく、市場が織り込んだリスクの可能性があります。所在地、築年、耐震性、修繕履歴、入居者、賃料の妥当性、管理体制、法令、出口価格を確認し、どのリスクを自分が引き受けるのかを説明できる状態にします。

事業投資では、収益の源泉を分解する

事業投資の候補には、成長企業への出資、新規事業、事業承継、共同経営、運営型事業などがあります。リターンは固定家賃ではなく、売上成長、粗利改善、稼働率向上、販路拡大、事業売却、配当などから生まれます。台湾側の販路、調達、技術、人材が日本事業の成長に貢献できる案件では、資金以外の価値も投資判断に含められます。

ただし『目標8%』は保証利回りではありません。事業計画、月次損益、資金繰り、経営者、顧客集中、許認可、株主権、配当条件、追加資金、退出方法を確認し、下振れ時の対応を決めます。中小企業庁の白書も、成長投資や事業承継を企業の稼ぐ力につながる重要な取組として扱っています。

不動産か事業かではなく、目的に合う役割を選ぶ

資産保全、担保価値、比較的予測しやすい賃料を重視するなら、不動産が合う場合があります。高い成長可能性、経営参加、台湾との事業連携を重視するなら、事業投資を検討する意味があります。両者を組み合わせ、事業拠点となる不動産と運営事業を分けて評価する方法もあります。

投資額、希望期間、必要な分配、許容損失、経営への参加度、換金時期を先に決めると、8%という数字だけに引っ張られずに候補を比較できます。

台湾投資家が確認する6つの資料

最低限、資金使途、過去実績と将来計画、収益計算の前提、運営責任者、主要リスク、退出・売却方法を確認します。不動産ではレントロール、修繕履歴、管理費、権利・法令、周辺賃料、売却事例を追加します。事業では財務諸表、顧客構成、契約、許認可、株主構成、資金繰りを追加します。

資料が日本語だけの場合も、単なる翻訳ではなく、数字の定義、未確定事項、専門家へ確認する項目を繁体字中国語で整理する必要があります。

比較の前に、次の確認資料をそろえる

候補を比べるときは、不動産なら実質収益と保有リスク、事業投資なら収益の仕組みと投資家の権利が分かる資料をそろえます。SERENSEEDでは、日本の成長事業、事業承継、共同事業を中心に候補を整理し、不動産を検討する場合も表面利回りだけでは判断しません。

投資には元本毀損や収益変動の可能性があります。資格・登録が必要な仲介、勧誘、契約、税務・法務業務は、該当する登録事業者または専門家と連携します。個別案件は資料確認と専門家の助言を受けて判断してください。

投資候補を比較する前に決めること

  • 投資可能額と通貨
  • 希望する投資期間
  • 目標収益と許容できる損失
  • 毎年の分配が必要か
  • 経営・運営へ参加できるか
  • 日本不動産と日本事業のどちらを優先するか
  • 売却・退出を希望する時期
  • 日台の法務・税務確認体制

費用を左右する主な項目

  • 候補案件の調査・情報整理
  • 法務・財務・税務の専門家確認
  • 契約・送金・保有体制
  • 投資後の運営・報告体制

よくあるご質問

日本の不動産で利回り8%は不可能ですか?

不可能ではありませんが、主要都市の安定型賃貸不動産では一般的な水準ではありません。郊外、築古、空室、修繕、権利関係、運営負担など、高く表示される理由を個別に確認します。

事業投資なら8%を保証できますか?

保証できません。事業の成長によって大きな収益を得られる可能性がある一方、業績悪化、元本毀損、配当停止、換金困難などのリスクがあります。目標収益と保証収益を区別してください。

表面利回りと実質利回りの違いは何ですか?

表面利回りは一般に年間賃料を物件価格で割った数字です。実質利回りは取得費、管理、修繕、税、保険、空室などを考慮するため、通常は表面利回りより低くなります。

台湾から日本事業へ投資するとき、最初に何を確認しますか?

投資目的、金額、期間、分配の希望、経営参加の可否を確認したうえで、事業計画、財務、資金使途、経営体制、契約、送金、日台の法務・税務、退出方法を整理します。

確認先・参考情報

制度や輸出入条件は変更されるため、実際の手続きでは各機関・専門事業者の最新情報をご確認ください。